ミニマルビジネス(以下、ミニビズ)の7つの要素は「ヒト・モノ・カネ・情報・時間・場所・顧客」です。ミニビズにおける「場所」とは地理的な場所だけではなく、マーケティングにおけるPlace(流通)を始めとした、ビジネスを行う環境全体を指します。
ビジネスを戦場に例えるのは好きではないが
ビジネスを行う場合には「ヒト」が活動する場所と「モノ」が流通する「場所」が必要になります。もちろん場所には自分だけでなく「顧客」の存在が不可欠です。ビジネスを戦場に例えるのは好きではありませんが、少なくともビジネスを行う場所を避けては通れません。
ミニビズのから受ける場所のイメージは、広い空間ではなく狭い空間で行うイメージがあると思います。たとえヒトが活動する空間が狭い場所でも顧客が存在する場所は同じ狭い空間とは限りません。流通が発達した現在では場所のイメージは対面取引のイメージとは大きく異なります。
提供する「モノ(コト・サービス)」によってはバーチャルな空間でのビジネスが可能です。この場合の「場所」はプラットフォーム(土台・基盤)を意味し、前述の戦場というよりは土俵・リングのイメージに近いと思います。
さらに自分と「顧客」を繋ぐ流通経路は直接ではなく間接的な取引が多く、流通するスピードも格段に速くなっています。したがって古くはAIDA・AIDMAなどの消費者心理は、最初のA( Attention)から最後のA(Action)までのスピードが速くなっているのです。
「場所(距離)」は時間とスピードを相まって顧客とのコンタクトになくてはなりません。
うまい・やすい・はやい
牛丼の吉野家のキャッチコピーは「うまい・やすい・はやい」です。創業当初は「はやい・うまい」の2つのメッセージだけでしたが、世相を反映して「はやい・うまい・やすい」へと順番が変わり、その後の「うまい・はやい・やすい」のキャッチフレーズを経て現在に至ります。
この場合の「はやい」は入店してから商品が提供されるまでの時間ですが、「はやい」がトップから3番目になったのは時代に応じた訴求効果のためで、はやさが軽んじられたわけではありません。供給側と需要側の距離が近いことが求められていることは変わりありません。
顧客との距離を縮めること、これが現在のビジネスに求められています。ミニビズでは大きなビジネスとは違い顧客との距離を縮めることが難しく、「場所」の設定を誤ると大きな弱点となってしまいます。この弱点を埋めるために顧客との距離を縮める方法が広告宣伝という方法があります。
ところがミニビズでは広告宣伝を多用することは資金的に難しく「カネ」の記事でお話ししたように投資ではなく消費、すなわち消耗戦になってしまいます。ではミニビズに適した「場所」とはどのような場所で、どのように見つければよいのでしょうか。
ミニビズに適した場所と場所の見つけ方
まず自分が居る場所を見極めることから始めます。同じ場所に「顧客」が居ること、自分と「顧客」を結びつける経路があることの3つが必要です。例えば私が住んでいる札幌から東京で対面の商売を行うことはミニビズでなくても難しい話です。
同じようにWindows使いの私がMacOSについて語るのも無理ですし、ビジネスに通用する英語を習得していない私が海外向けにビジネスを行うのも無理な話です。極端な例ではありますが、このようなミスマッチがあるとビジネスはうまく進みません。
ミニビズは自分と同じ思考・志向・嗜好の「顧客」が居る場所を見つけることから始まります。そのためには自分の思考・志向・嗜好を表現するメッセージをシンプルに掲げる必要があります(吉野家のように)。そのメッセージを「顧客」のいる場所で訴求します。
もし自分が居る場所に顧客が居なければ顧客の居る場所への移動を余儀なくされますが、自ら移動する方法と顧客に移動してもらう方法があります。いずれにせよ移動は最小限に越したことはありません。
ミニビズでは移動も最小限にすることにも留意します。
顧客の居る場(ば)は場所とは限らない
顧客が居る場所とは物理的な場所だけではなくインターネットのような仮想の場所もあります。同じように物理的な移動ではなく、インターネットのように検索サイトという場所も顧客の居る場所です。別の考え方をすれば媒体自体が顧客の居る場所となります。
「場所」は「場(場)」であり、顧客と同じ媒体を持つことで「場」は成立します。すでにある「場」といえばSNSがありますが、SNSを駆使して自分の場所を広げビジネスを行っているのは衆知でしょう。ミニビズも同じです。
異なるのは場所の大きさです。場所が大きければ顧客も多くなると考えがちですが、自分と同じ思考・志向・嗜好ではない人も増えるので「場」の大きさを追求することはお勧めしません。むしろ限られた人数に提供するほうがミニビズには適しています。
このように考えると提供するものがモノであれば大きくないモノ、コトであれば条件を絞ったコト、サービスであれば限られた顧客となります。特にモノは有形のモノよりも無形のモノのほうが提供しやすいことはお分かりでしょう。
ミニビズの場所は「場」であり「媒体」でもあります。
ミニビズの場所とは狭小市場、限定市場
日本人は期間限定、数量限定、当店限定、会員限定など限定商品に弱いと言われています。実際には余裕があっても限定商品と謳っている場合もありますが、供給能力に限界がある場合が限定商品の本来の意味です。
ミニビズは供給能力に限界を設定した限定商品を扱うので限定市場となります。そんなんじゃ儲からないじゃないかという人もいるでしょう。儲けとは「カネ」の話で、ミニビズのカネは投資として考えると以前にお話しました。
儲かるか儲からないかは顧客次第です。その顧客との接点が「場所」に他ならないのです。